蒸留における銅
蒸留に銅が使われる理由
銅の役割は、風味を生むことではなく、硫黄臭を抑えることです。
レッスンの進捗を記録
無料でログインすると、受講状況が保存され、前回の続きから簡単に再開できます。
銅製蒸留機:銅が実際に解決すること(そして解決しないこと)
銅は、蒸留設備をめぐる議論の中でも特に先入観の多いテーマです。外観上の好みにとどまらず、銅を原料のように捉え、「銅製蒸留機なら酒質が向上する」と考える人も少なくありません。
銅の役割は、特に発酵がストレスを受けた際に生じる刺激の強い硫黄臭を低減すること、と考えるのが最もシンプルです。銅は風味づくりの近道ではなく、最初に見直すべき要素であることもほとんどありません。
ここでも焦点は蒸留機の設計です。蒸留塔の設計と運用が成分分離を左右し、蒸留釜が蒸気供給を決めます。素材は、前工程の問題を補うこともあれば、工程を清浄かつ再現性の高い状態に保つ一助にもなります。
要点
- 銅は豊富で安価、かつ成形しやすかったため普及した
- 蒸留所の大規模化に伴って発酵上の問題が増え、銅が「より優れた風味」と結び付けられるようになった
- 銅は、ストレスを受けた発酵で生じる硫黄系副生成物と反応し、その低減に役立つ
- 発酵温度を管理すれば、硫黄化合物の生成と銅の必要性を抑えられる
背景:銅が風味を生むと考えられるようになった理由
銅製蒸留機の必要性は、しばしば単純な物語で説明されます。蒸留所がステンレス鋼へ移行すると品質が低下し、その後「銅がより優れた風味を生む」と学んだ、というものです。もっともらしく、伝統にも合致するため、この説は今も根強く残っています。
伝統と最適化は同じではない
自動車を知らなければ、移動には馬を使うでしょう。しかし、ほかの選択肢を理解した後も、馬が最適な通勤手段とは限りません。
銅が標準素材となった理由
歴史的に、銅は広く入手でき、加工しやすい素材でした。加熱して叩けば曲げたり成形したりできたため、近代的な製造方法が普及するはるか以前から、蒸留機の製作に適した素材として用いられてきました。
銅が実際に解決していた問題
20世紀に蒸留産業の集約化が進むと、多くの事業者が生産規模を拡大しました。大規模化によって変わったのは蒸留機のサイズだけではありません。発酵の挙動も変化しました。ここに、「銅のほうが風味に優れる」という説が生まれた背景があります。
大規模な発酵ほど温度が上がりやすい
大規模な発酵では、表面積に対する液量が多いため、熱を逃がしにくくなります。発酵規模が大きくなるほど温度が上昇しやすく、その熱が酵母にストレスを与え、硫黄化合物などの副生成物を増加させます。
銅は硫黄化合物と反応する
銅は硫黄化合物と反応し、その刺激的な風味を低減できます。発酵の大規模化によって熱ストレス由来の硫黄化合物が増えると、蒸留時に銅と接触させることが、問題の一部を軽減する手段となりました。
発酵工程のミスを蒸留機で補わない
蒸留を「糖化 → 発酵 → 蒸留」という一連の工程として捉えるなら、発酵で生じた問題を蒸留段階で解決するのは、後工程での対症療法にすぎません。通常は、上流工程の管理を改善するほうが効果的です。
より良い解決策:発酵温度を管理する
より良い対策はシンプルです。発酵を適切に管理してください。温度を管理すれば、酵母へのストレスと硫黄化合物の生成が減り、除去手段として銅に頼る必要性も低下します。
発酵が風味形成の重要な工程である理由を復習するには、発酵が風味を左右する理由をご覧ください。
要点
- 銅が普及したのは加工性に優れていたためであり、風味づくりのために選ばれたわけではない。
- 銅が品質と結び付けられるようになったのは、ストレスを受けた発酵で生じる硫黄由来の刺激を低減できるためです。
- クラフト蒸留所にとって、より効果的な対策は発酵温度の管理です。
- 素材は目的に応じて選び、伝統を根本原因の分析に代えてはなりません。
レッスンの進捗を記録
無料でログインすると、受講状況が保存され、前回の続きから簡単に再開できます。